在宅緩和ケアが継続できず再入院となる症例を予測するためのチェックリストNo.1

(キーワード:介護力、経済力、再入院の要因、再入院の予測)
○川 二美1) 北井 靖美2) 松延理恵2) 佐伯 尚美3) 桂 あかり3) 内藤美保3) 橋本芳正4)
医療法人いちえ会 洲本伊月病院 療養病棟1) 一般病棟2) 訪問看護3) 緩和ケア外科4)

はじめに

当院は、一般病棟50床、療養病棟100床と訪問看護を有する地方の私立病院である。 私達は緩和ケアチーム(算定なし)を発足し病院・在宅に関わらず、緩和ケアの提供をしている。
本人・家族の希望があれば、可能な限り在宅でのケアを行っているが、全ての患者が在宅で看取れるとは限らない。
そこで、入院していた患者が退院し在宅に移行したのち、再入院する事が予測できれば継続看護に生かせるのではないかと考えた。
過去再入院の要因をスコア化しての予測に対する研究は少ない。
私達は平成17年からの6年間で病棟・在宅を合わせ421名の終末期患者を看取ってきた。
今回平成17年からの3年間を振り返り、再入院の理由を分析し要因を抽出。
その要因を元に再入院を予測するスコア表示によるチェックリストの作成を試みた。

目的

再入院を予測するチェックリストの作成

倫理的配慮

この研究に対し当初より、対象者からは学会発表に対する承諾を得ており、且つ当院の倫理委員会の承認を得て、個人を特定するような表現は避けた。

研究方法

対象:H17~19年に入院した終末期患者
方法:入院後、在宅緩和ケアへ移行した全45例に後ろ向き研究を行い再入院に至った要因を抽出・分析しスコア表示によるチェックリストを作成する。

研究内容

各症例の再入院の理由を分析し、以下の6項目、項目①介護力不足②本人の在宅療養希望③家族の在宅療養希望④経済力不足⑤介護不安⑥症状不安が主要因として抽出されたことは平成20年に研究し発表した。
1)この抽出した6項目を元に過去の症例を振り返り、再入院を予測するスコアを作成することにした。
再入院した群(A群)全7例と、再入院しなかった群(B群)からランダムに7例をサンプリングし、各項目を5段階評価にてスコア化した。
しかし単に各項目のスコアの合計だけではA群とB群には明らかな差を認めなかった。
だが私達は各群には明らかな差があると考え、それは各項目に軽重があるためと考えた。
各項目の軽重を判断する為に、A群とB群を項目別に平均値を比較すると、経済力、介護力においての差が他の項目と比べ大きい事がわかった。
そのことより、介護力は3倍、経済力は2倍の重要性があると考え、それらを係数として、再度スコア化を行った。
スコア=項目(①×3+②+③+④×2+⑤+⑥)

項目
A群平均 1.85 4.14 3.57 2.71 2 1.85
B群平均 3.42 4.57 4.14 3.71 2.42 2
平均の差 1.57 0.43 0.57 1 0.42 0.15

結果

A群は全例29点以下、B群は全例30点以上であり、両群の間に有意差を認めた(P<0.0001)。

考察

A群とB群間に有意差を認めたことから、再入院の予測が可能であると考える。
それは再入院の個々の要因に軽重があることに気づき、係数をかけたことで、有効なスコア化が出来たからではないかと推察する。

結語

今後もスコアチェックを継続し、継続看護の充実を図ると共に先を見越した緩和ケアの提供を行って行きたい。

参考文献

  1. 訪問看護と介護 2009②Vol.14 No.2 医学書院P154-1