癌性腹水に対する腹腔静脈シャント術後、在宅緩和ケアに移行できた11例の報告

医療法人社団 いちえ会 洲本伊月病院 緩和ケア外科1)
〇 西尾 美帆1) 岡 頼子1)  橋本 芳正1)

目的

当院では難治性腹水に対し、腹腔静脈シャント(以下PV-s)を積極的に施行している。これまでに計106名に施行してきたが、特に悪性疾患に伴う腹水患者の場合、全身状態が良くない例も多い。そのような状況下QOLが改善し、在宅緩和ケアに移行できた11例を報告する。

方法

H26 ~28年の3年間にPV-sを施行した23例(男12女11)のうち悪性疾患に伴う19例(男8女11)について術後の経過について検討した。

結果

19例のうち11例(男4女7)が在宅緩和ケアに移行できた。
<在宅移行11例>
年齢:42~87才(平均71.0才) 術後生存日数:8~364日(平均79.9日)
術後退院までの日数:3~30日(平均9.5日) 在宅日数:2~357日(平均62.6日)
4例は術後体調が良くなり、化学療法を再開した。
<退院できなかった8例>
年齢:63~89才(平均74.1才) 術後生存日数:3~15日(平均10.5日)
2例(生存期間13日と15日)は家庭の事情により在宅が難しかったが、外出して食事会やカラオケ大会に出席することができた。
6例は腹水は著明に減少、腹部膨満に伴う苦痛は軽減したが、術前からあった倦怠感・呼吸苦等はあまり改善せず、肝不全の進行あり短期間のうちに永眠された。

考察

癌性腹水の患者でもPV-sによりQOLが改善し在宅に移行できる可能性はあり、検討する価値はあると考える。