若年で発症したカルチノイドの患者に、6年半にわたり緩和ケアを行った1症例

医療法人社団 いちえ会 洲本伊月病院 緩和ケアチーム1)
〇橋本 芳正1) 川 二美1) 西尾 美帆1)

はじめに

カルチノイドの発育は緩徐であるが効果的な抗癌剤もなく、再発した場合は積極的治療が難しい。今回若年で発症し、肝転移を生じたなかで結婚、出産しその後病院で永眠となった症例を経験したので報告する。

事例

女性、発症年齢29歳。黄疸にて受診、精査後ファーター乳頭のカルチノイドと診断。
H17.2月 膵頭十二指腸切除術施行。リンパ節転移あり。
H20.11月 多発肝転移を認めたが本人家族共に積極的治療を希望せず、緩和ケアを開始。
H21.4月 結婚
H22.4月 女児出産
H24.4月 ステロイド内服開始
H26.3月 倦怠感著明となり点滴での症状緩和の為入院。
H26.4月 子供の入園式参加。家族との時間を持つ為入退院を繰り返す。
H26.5月 永眠。

考察

長期にわたる緩和ケアを行う中でいくつもの彼女の人生の大きな変換点に関わった。共に悩みながら精神的ケアを中心に行い、また症状の変化に合わせ投薬し、可能な限り在宅で日常生活が行えるよう援助した。
最後はADLが低下し精神的に不安定となった時期もあったが、緩和ケアチームと家族が協力しあい、精神的安定を得られ穏やかに永眠となった。
若年者でしかも長期にわたる緩和ケアは特に家族も含めた精神面でのケアが重要となる。早期から家族ぐるみで緩和ケアチームと濃厚な関係を持ち、信頼関係を確立できたことが穏やかな看取りへと繋がったのではないかと考える。