当院の緩和ケアにおけるステロイド使用状況についての検討

医療法人社団 いちえ会 洲本伊月病院 緩和ケアチーム1)
〇西尾 美帆1) 橋本 芳正1)

目的

癌の終末期に高頻度で出現する倦怠感や食欲不振といったがん悪液質症候群に伴う症状の緩和にステロイドが有効であることは広く知られており、当院でも経口(PO)で、経口摂取が難しくなれば経静脈(IV)で亡くなるまでの期間積極的に使用している。今回IVでの投与期間を中心に使用状況を検討した。

方法

H24年から3年間にIVでステロイド投与を行った320例の投与期間を①POから移行したPO(+)193例とIVから開始したPO(-)127例②消化器系の癌125例と肺癌97例 に分け調べた。今回消化管穿孔や出血といった重篤な副作用はなかったが、高血糖をきたす症例が散見されたのでこれについても検討した。

結果

平均投与期間は①PO(+)12.3日、PO(-)12.9日②消化器系癌11.7日、肺癌12.1日と差が無かった。但し消化器系癌ではPO(+)が47%であったのに対し肺癌では71%であった。血糖値>300となった症例は67例(20%)であり、その内インスリンを使用したのは34例であった。

考察

PO(-)の症例の多くは他院からの紹介時すでに全身状態が悪く経口摂取が難しかった例の為投与期間は短くなると予想したが実際には変わらなかった。PO(+)の症例でステロイドの効果により経口摂取可能な期間が延びている事が関係していると考える。また消化器系の癌と肺癌でもIV開始からの余命に差はなかった。肺癌ではPO(+)の割合が多かったが、当院への紹介のタイミングも関係していると考えられる。