難治性腹水に対し腹腔静脈シャント術を施行した167名の治療効果、短期死亡率についての検討

医療法人社団 いちえ会 洲本伊月病院 緩和ケアチーム
〇西尾 美帆 藤田 逸郎 橋本 芳正

目的

当院では難治性腹水に対し腹腔静脈シャント(以下PV-s)を積極的に施行しており、累計167名となる。今までにも効果が得られなかった症例の検討等行ってきたが、どの程度効果が得られるか術前に予測するのは難しく、また術後急速に状態が悪化した症例も散見される。難治性腹水に苦しむ患者が、PV-sの治療効果や短期死亡率の現状についても説明された上で治療を受けるかどうか判断するべきと考え、今までの施行例について検討した。

方法

2001~2023年の23年間に新たにPV-sを施行した167名(癌114名、肝硬変53名)を、○効果あり、△一部効果あり、×効果なしに分類、その割合と短期死亡率を求めた。効果があったかどうかの判断は、腹部膨満による苦痛の軽減とQOL改善の程度を元に筆者の主観に基づき行った。癌患者の場合PV-sをするしないに関わらず余命が短い場合もあり生存期間は考慮しなかった。

結果

全体:×25名(15.0%)、△20名(12.0%)、○122名(73.1%) 
癌症例:×20名(17.5%)、△13名(11.4%)、○81名(71.1%) 
肝硬変症例:×5名(9.4%)、△7名(13.2%)、○41名(77.4%)
短期死亡率
全体:3日以内9名(5.4%)、5日以内13名(7.8%)
癌症例:3日以内8名(7.0%)、5日以内12名(10.5%) 
肝硬変症例:3日以内1名のみ(1.9%)

考察

PV-sは癌か肝硬変かによって差はあるものの全体では73%の患者で有効であるという結果になった。効果が得られない可能性が高くなる要因の一つに胸水があることを以前発表したが、胸水があっても効果が得られる例も多い。今までも術前に十分説明を行っているが、今後このデータも患者に提示することでPV-sを受けるかどうかの判断の一助にしてもらえればと思う。