主治医インフォームドコンセント(I.C.)後に終末期医療における要望書を提出された多発性硬化症(MS)患者の一事例

医療法⼈いちえ会 洲本伊月病院 緩和ケアチーム
〇新川 忠輔、川 ⼆美、奥井 ⼤介、⻄尾 美帆、岡 頼⼦、橋本 芳正

はじめに

⻑期経過のMS患者に対し、疾患に対する積極的な治療の継続は困難であると主治医より説明があり、説明後に終末期医療における要望書の提出があった事例があったので報告する。

事例

40歳代、男性。200X年Y⽉四肢の運動⿇痺と感覚障害が出現し、MSと診断。ステロイドパルス療法施⾏。寛解と増悪を繰り返し、201X年Y⽉までに29回の⼊院歴あり。再発時には⿇痺や感覚障害以外にも嚥下障害や膀胱直腸障害、視野狭窄など様々な症状を呈した。⻑期間の経過で⾝体機能は低下したが、現在は⾞いすと⻑下肢装具、松葉杖歩⾏の併⽤でADL全般⾃⽴しており、仕事も続けている。QOLを最も阻害している因⼦が左上下肢の疼痛であり、コントロールができない場⾯もみられる。直近の⼊院で主治医より疾患に対する積極的な治療の継続は今後困難と説明があった。その後、本⼈より家族の同意がある苦痛緩和以外のすべての医療⾏為や延命処置を希望しないという終末期医療における要望書が病院に提出された。倫理委員会にて協議し、本⼈や家族と話し合いを⾏い、再⼊院時などに意思を再確認し、適宜書類を更新していくこととなった。

考察

I.C.により、事前に意思を伝えておきたいと家族と相談し、提出してきたと考える。今後思いの変化もあり得ることを考慮した対応が必要となる。今後、本事例のようなケースに対応できるよう病院全体でのスキルアップが課題である。