デンバーシャントを行う際のインフォームドコンセント用紙の作成とその運用について

医療法人いちえ会 洲本伊月病院
〇橋本 芳正、西尾 美帆、橋本 悠、藤田 逸郎

目的

我々は緩和治療の一環として、肝硬変や癌性腹膜炎の腹水に対し積極的にデンバーシャント(以下PV-S)を行っている。過去20年間に167例のPV-Sを行った。その結果を後方視的に検討し、肝硬変、癌性腹膜炎それぞれのPV-Sを行う際のインフォームドコンセント(以下IC)の用紙を作成し、その運用を行った。

方法

肝硬変、癌性腹膜炎それぞれの症例を検討し手術の効果、有効性、予後を集計しそれぞれに応じたIC用紙を作成した。それらの用紙を用いICを行った。

結果

肝硬変症例 53例、有効77%、やや有効13%、無効10%、5日以内の死亡1例であった。癌性腹膜炎症例 114例、有効71%、やや有効11%、無効18%、5日以内の死亡(現病死を含む)10%であった。以上の結果を基にIC用紙を作成し肝硬変3例、癌性腹膜炎4例に使用した。いずれの患者、家族もリスクを理解した上で、積極的にPV-Sを希望した。

考察

肝硬変、癌性腹膜炎に伴う腹水は、苦痛を伴い、腹水穿刺を行えば一時的には苦痛がとれるがその後、より全身状態の悪化をもたらす。PV-Sは自身の腎機能を利用し、腹水コントロールを行うことで、恒常的に腹満が無い状態が維持できる治療法である。両疾患ともリスクが大きく、予後不良であるが、PV-Sを行うことにより、限られた時間であっても苦痛を除去できQOLの改善が得られる。C 用紙使用前は肝硬変、癌性腹膜炎を合わせて、おおよその予後やリスクを説明していた。今回それぞれの疾患別にIC 用紙を用いて具体的な数値で患者、家族に有効性、予後を説明することで、より納得して積極的にPV-Sを受けてもらうことができた。全例有効、あるいはやや有効の結果であった。今後も腎機能等の全身状態が維持できているうちに、PV-Sを行うことで患者、家族の苦痛の軽減を図っていきたい。そのためにも今回のIC用紙を積極的に活用していきたい。それぞれのIC用紙を提示する。