家族の入院希望時、新型コロナウイルス感染をし在宅での看取りに至った結果、家族が満足した症例

医療法人いちえ会 洲本伊月病院 緩和ケアチーム
〇佐伯 尚美、桂 あかり、居内 恵美子、川 二美、岡 頼子、西尾 美帆、橋本 芳正

はじめに

新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)が流行を繰り返す中、当地域では入院可能な病院は少なく、入院ができたとしても感染対策のため面会禁止となっていた。 今回、第6波の最中、在宅緩和ケアで療養中の患者が亡くなる2日前、ADLの低下が著明となり、入院希望されたが、コロナ抗原検査が陽性となり、在宅で看取りとなった症例を経験した。

事例

80歳代 男性 直腸癌 低位前方切除後 肺転移 化学療法で通院 妻・三男と3人暮らし 別棟に次男家族(孫が介護士)在住。長男は隣市、長女は同市在住で1~2回/週来訪。日中は老夫婦のみで、毎日ヘルパーを利用。 亡くなる 2週間前、点滴での症状コントロールが必要になり、訪問看護4回/週利用。常々、家族会議を促していたが出来ていなかった。本人は在宅希望だったが、家族は立位不可能になれば入院と考えていた。徐々に ADL の低下が見られ、家族が入院を希望し受診。コロナと診断され入院できず。在宅療養を継続するために在宅酸素の手配と主治医から密なインフォームドコンセント(以下 I.C.)を実施。普段は介護に携われなかった孫が主となり、看護・介護をし、家族に見守られ受診2日後に永眠。

考察

入院ができないということで家族会議をする機会になり、孫というキーパーソンを決定したことで在宅療養を行う上での基盤ができた。又、介護経験のある孫が中心になることで、他の家族の安心に繋げられ、在宅での看取りに至ったと考える。 今回の症例では、患者の状態を見ながら余命も含め介護期間が短いことについて I.C.を行うことで、家族の団結を生み在宅での満足のいく看取りが可能になったと推察する。