急速な呼吸機能低下をきたした筋委縮性側索硬化症(ALS)患者2例の経験から アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の適切なタイミングについての検討

医療法人社団いちえ会 洲本伊月病院 緩和ケアチーム
〇凪 淳子、川 二美、西尾 美帆、藤田 逸郎、橋本 芳正

はじめに

筋委縮性側索硬化症(ALS)は経過中生命にかかわる選択をする必要があり、適切な時期にACPを行い意思確認する必要がある。今回気管切開・人工呼吸器装着は希望されず緩和ケア目的で紹介となったALS患者のうち、今後について相談中に状態悪化し病院での看取りとなった2例について検討した。

事例

A氏:70歳台。発症から1ヶ月リハビリ開始。4ヶ月ALSと診断、告知、緩和ケア外来紹介。ADLは歩行可、時間はかかるが経口摂取可。緩和初診時ポート、点滴治療、ACPについて説明。その後通院がしんどくなりリハビリキャンセルの連絡あり、訪問リハ・訪問看護を勧める。初診から21日経口摂取不可、呼吸困難あり来院。点滴施行、在宅酸素導入し帰宅。22日呼吸困難、意識レベル低下あり救急搬送、入院。23日永眠。
B氏:80歳台。発症から10ヶ月ALSと診断、リハビリ開始。14ヶ月緩和ケア外来紹介。ADLは歩行可、少ないが経口摂取可。 緩和初診から5日ACP施行。10日在宅準備の為入院、ポート留置。退院の日程調整中出来ない事が日に日に増加。29日嚥下困難。30日SpO2低下、意識レベル低下。32日永眠。

考察

A氏はとりわけ進行が速く、またご本人の経験からリハビリでの症状改善に強い希望があり病気の受容が難しく、ACP自体困難であった。緩和初診から9~21日はリハビリをキャンセル、こちらが提案した事について相談中とのことで介入出来ないままであった。B氏は初回ACP時在宅を希望されたが、症状が進行する中家族の負担を考え迷いが生じていた。2度目のACPを考慮中であった。2例とも歩行・経口摂取可能な状態からの急速な悪化が予測困難であった。ACPも含めた色々な提案を各部署からしても、その後のフォローが密でないとタイミングを逃してしまうため、部署をまたいだ担当者が患者・家族の病気の受容、気持ちの変化、病気の進行等を見ながら適切なタイミングで支援を行う必要がある。