高齢者の長期在宅療養や看取りにおける介護者支援の重要性 「悪くなればいつでも入院できるよ」と説明後、入退院を繰り返した一例

医療法人社団 いちえ会 洲本伊月病院 緩和ケアチーム1)
○佐伯 尚美1) 桂 あかり1) 川 二美1)
岡 頼子1) 西尾 美帆1) 橋本 芳正1)

はじめに

当院では終末期の患者を病院だけでなく在宅でも看取っており、在宅療養を薦める際は必ずバックベッドの確約をしている。家族の不安が強く通院治療が可能にもかかわらず、わずかの発熱でも入退院を繰り返す症例があった。このような患者に対し訪問看護を導入することで家族の不安が緩和され長期在宅療養後、在宅での看取りができたので報告する。

事例

86歳 男性 妻・長男家族と5人暮らし。主介護者は高齢の妻。
2014年大腸癌切除後、肺転移。2015年から約2年間に発熱等で15回の短期の入院を繰り返していた。そこで主治医の指示にて、2016年11月より訪問看護を導入。症状の出現時には随時訪問し、抗生剤等を実施。以降1年以上入院せずに在宅療養を継続。妻より、受診や見舞いに通院していた時よりもゆっくりケアができるようになった等前向きな発言があった。2017年12月家族に予後説明を行なったが入院希望されず、2018年2月末に自宅で永眠。

考察

バックベッドの確約があることから、不安や介護負担が強くなると通院をせず、すぐに入院を希望していた。訪問看護師が介入し、患者・家族の話を傾聴、かつ何度も繰り返し説明や助言等行うことで、精神的不安の軽減を図れた事が妻の言動から推察された。信頼関係の構築に伴い、在宅療養のメリットを介護者が実感することで患者の希望する療養継続に繋がったのではないかと考える。